サンフランシスコのカストロ地区にあるカストロ・シアターは、1世紀以上にわたり、同市を代表するムービー・パレスの一つとして、また文化的なランドマークとして親しまれてきました。約60億円を投じた2年間にわたる改修を経て、同施設は今年2月にリニューアルオープンしました。近代化された設備と、ライブ音楽の開催に対応する新たな技術インフラが導入され、これまで主に映画館として運営されてきた空間に、新たな機能性がもたらされました。
今回のアップグレードの一環として、Meyer Soundは2つの音響システムを提供しました。一つはASTRYAをベースとした映画上映用システム、もう一つはライブ公演用のLEOPARDシステムです。これらは、歴史的価値のある内装を保護しつつ、映画上映モードとコンサートモードの間で迅速にシステムを切り替えられるよう設計されています。
ベイエリアの複数の会場運営やイベント企画を手掛けるアナザー・プラネット・エンターテインメント(Another Planet Entertainment)社がカストロ・シアターを運営しており、映画上映に加えライブ音楽イベントにも対応できるよう改修を主導しました。「カストロ・シアターには現在、Meyer Soundのシネマ用スピーカーによる7.1chサラウンドシステム、世界最大のデジタル・シンフォニック・オルガン、そして最先端のMeyer SoundコンサートPAシステムが導入されています」と、アナザー・プラネット・エンターテインメントの上級副社長であるメアリー・コンデ(Mary Conde)氏は語ります。
劇場およびAVコンサルタントをシャレック・コラボラティブ(The Shalleck Collaborative)社が務め、施設の近代化を担当したCAWアーキテクツ(CAW Architects)、歴史的建造物の保存を担当したページ&ターンブル・アーキテクツ(Page & Turnbull Architects)、音響設計を行うサルター(Salter)と協力し、修復された歴史的空間の内部に現代のプロダクションシステムを統合するための音響処理を設計しました。
改修の大きな柱となったのは、カスタムメイドの可変式座席システムの導入です。映画モードではプラットフォームシステムが展開して傾斜のある客席を形成し、そこにクッション付きの椅子を配置することで、本格的な映画館の雰囲気を再現します。
一方ライブイベント時には、それらのプラットフォームが収納され、椅子が完全に撤去されることで、ホールは階段状のオープンフロア構成へと変貌します。約4時間を要する転換作業は、新たに設けられたバックステージの収納エリアと、座席一式を保管・運搬するために専用設計された資材用リフトによって円滑に行われます。
設計上のあらゆる決定において、運営上の柔軟性と、劇場の歴史的な建築様式への配慮という2つの優先事項のバランスが考慮されました。例えば、「かつての固定スクリーンは何十年もの間、創建当時のプロセニアムを覆い隠していました」と、シャレックのプリンシパルであるイアン・ハンター(Ian Hunter)氏は説明します。「現在、新しいロールアップスクリーンによって、金箔が施された美しい本来のステージが現れるようになりました。また、ライブパフォーマンスに対応するため、1920年代当時の映画用スクリーンがあった位置にはLEDウォールを設置しています」 Dolby Atmosの導入も検討されましたが、装飾が施された天井を保存する必要があったため、ハイトスピーカーの設置は現実的ではないと判断され、最終的に7.1チャンネル・サラウンドシステムに落ち着いたとハンター氏は説明しています。
ウルトラサウンド(UltraSound)社がMeyer Soundシステムの納入と設置を担当しました。「Meyer Sound社のシステムを供給するだけでなく、パフォーマンス用システムの設置や、シネマおよびパフォーマンス両システムの調整・試運転(コミッショニング)も行いました」と、ウルトラサウンドのオペレーションディレクターであるジョシュ・オズモンド(Josh Osmond)氏は説明します。「ウルトラサウンドは劇場のオーディオマネージャーとしても機能し、すべての公演でスタッフを配置してシステムを運用します」
新しいシネマシステムは、スクリーン裏に配置する3台のASTRYA-140スクリーンチャンネル・スピーカーと、サラウンド用として配置された30台のULTRA-X20コンパクト・ポイントソース・スピーカーを中心に構成され、2台の2100-LFC低域コントロール・エレメントが低域を補強し、1台のGalileo GALAXY 408ネットワークプラットフォームによって制御されています。
ライブパフォーマンス用システムは、フライング配置された12台のLEOPARDコンパクト・リニア・ラインアレイ・スピーカーと、片側10台の900-LFC低域コントロール・エレメントを中心に構成され、フィル用として5台のULTRA-X40、フロントフィルとして6台のULTRA-X20、バルコニーディレイとして3台のULTRA-X40が配置され、2台のGalileo GALAXY 816ネットワークプラットフォームで制御されています。
「ステージ上のスペースには限度があるため、映画上映以外の公演では映画用スピーカーを取り外して格納する必要があります」とオズモンド氏は語ります。「ウルトラサウンドは、ASTRYA映画用スピーカーを取り付ける専用ケージを自社で設計・製作しました。このケージには吊り下げ用のピックポイントと、保管・移動用の台車が備わっています。これによりスムーズな転換が可能となり、わずか30分以内で映画用から公演用システムへと切り替えることができます」
今回の改修には、カストロ・シアターの愛されてきた伝統を守るための、オルガンの大幅なアップグレードも含まれていました。「約1億5,000万円を投じた新しいデジタルパイプオルガンシステムの一部として、Meyer Soundのサラウンドスピーカーを活用しています」とハンター氏は説明します。「新しいリフトとスライド式ステージにより、映画とライブイベント間の転換作業を妨げることなく、オルガン演奏を行うことができます。ステージが開き、オルガンを乗せたリフトが上がり、再びステージが閉じて全体を覆うまで、その一連の動作は約1分で完了します」
コーダ・テクノロジーズ(Coda Technologies)社がAV設置施工会社として最終設計と常設インフラの構築を行いました。将来的なニーズの変化にも適応できるよう、広範な接続性を確保しました。「光ファイバー、銅線、映像、Clear-Com(インカム)の接続プレートを館内の至る所に配置しました」とコーダの社長であるマーク・ラティマー(Mark Latimer)氏は語ります。「用途に応じて、必要な場所へ自由に信号を送受信できます」 なお、配線ルートが制限される歴史的建造物ならではの施工上の制約もありました。「ケーブルの通線作業によっては、4人の作業員が丸一日がかりで1本の引き込みを行った場所もありました」とラティマー氏は言います。また、映画鑑賞のアクセシビリティ向上ため、視覚・聴覚障害者向けのDolbyクローズドキャプションや音声ガイド機能も統合されました。
真価が問われたのは、2月6日の一般公開が再開された時でした。「オープニングの夜、ステージからオルガンがせり上がってきた光景は実に感動的でした」とラティマー氏は振り返ります。「1978年からカストロ・シアターで演奏を続けているオルガニストのデヴィッド・ヘガティ(David Hegarty)氏が赤いスーツを身にまとい、この巨大な新しいオルガンと共に登場したのです。会場全体が熱狂に包まれました。まさに魔法のような瞬間でした」
2月10日に始まったサム・スミスの20日間にわたるレジデンシー公演「To Be Free: San Francisco」は、新しい音響システムの性能を証明する最初の注目すべき公演となりました。その後、同劇場は第69回サンフランシスコ国際映画祭のメイン会場となり、4月24日のオープニング上映や、5月4日にルーカスフィルムおよびアナザー・プラネット・エンターテインメントの協力で開催された『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の特別クロージング上映を成功させました。
音響設備とインフラの刷新により、カストロ・シアターはその建築的な個性を維持しつつ、新たな時代のプログラム展開に対応できる体制を整えました。「Meyer Soundのサポートのおかげで、リニューアルしたカストロ・シアターは優れた音響設計と施工を体現する素晴らしい施設となりました」とコンデ氏は締めくくります。「彼らの献身とプロフェッショナリズムにより、カストロ・シアターのレガシーはさらに次の100年へと受け継がれていくことでしょう」




















