サウンド デザイナーのボビー エイトケン(Bobby Aitken)氏は、カーディフのシャーマン シアター(Sherman Theatre)やナショナル シアターのドルフマン シアター(Dorfman Theatre)で上演され、チケット完売を記録したミュージカル『Pride』において、Meyer Soundのシステムを用いてサウンドスケープを構築しました。11月12日からプレビュー公演が始まるロンドンのブリッジ・シアター(Bridge Theatre)へと舞台を移すにあたり、彼は今年3カ所目となるこの会場に合わせて、音響デザインを再構築しています。

2014年の映画をベースにした『Pride』は、1984年から1985年にかけての炭鉱労働者ストライキの際、南ウェールズの炭鉱の村のために資金を集めたロンドンの活動家グループ「Lesbians and Gays Support the Miners」の実話を描いた作品です。クリストファー ナイチンゲール(Christopher Nightingale)、ジョシュ コーエン(Josh Cohen)、DJ ワルデ(DJ Walde)によるオリジナル楽曲は、ポップスやロックからプロテスト ソングまで多岐にわたります。

「この作品にはウェールズの合唱音楽がふんだんに盛り込まれています。ウェールズの人々は合唱が大好きですからね。一方で、ロンドンが舞台となる場面では1980年代のディスコ音楽も多く登場します。そのため、ディスコのシーンでは大きくパワフルなサウンドを響かせ、伝統的な合唱曲のシーンでは広がりと没入感のあるサウンドを実現するという、非常に挑戦的な音響システムが求められました」とエイトケン氏は語ります。彼はこれまで、ウェスト エンドやブロードウェイ、アリーナ規模の公演など幅広く活躍しており、『マンマ ミーア!(Mamma Mia!)』や『スタンディング アット ザ・スカイズ エッジ(Standing at the Sky’s Edge)』、さらにはロンドン2012オリンピック開会式といった数々のプロジェクトを手掛けてきました。

より広い空間にはラインアレイを

カーディフおよびドルフマン・シアターでの公演では、Meyer Sound ポイントソース スピーカー ULTRA-X80が使用されていました。しかし、ブリッジ シアターではより広い範囲への音の拡散が求められるため、エイトケン氏は本公演で初めてラインアレイを採用することにしました。

客席左右の10台構成のLEOPARDラインアレイが音楽を担い、フライングされた7台構成のLEOPARDセンター アレイがボーカルを担当します。「ボーカルの一部を左右のシステムにも少し混ぜることにはなるでしょうが、基本的にはボーカルを他の音源とは分けて扱うようにしています」とエイトケン氏は言います。

ULTRA-X42、ULTRA-X40、ULTRA-X20ポイントソース スピーカーがフィルおよびディレイとして機能し、UPJuniorおよびUP-4XPスピーカーが主要なサラウンドを担っています。センター アレイとともに4台の2100-LFC低域コントロール エレメントがフライングされ、各サイド アレイを1台の900-LFC低域コントロール エレメントがサポートします。システム全体は5台のGalileo GALAXYネットワークプラットフォームによって制御されています。

「ここでの最大スローはおそらく20メートル未満であり、これは実のところ非常にありがたいことです」と彼は言います。「ラインアレイを使うと、音の響き方が変わります。以前のような、非常にダイレクトでロックンロール的なサウンドとは質が異なるため、これには少し慣れる必要がありますね」

限られた劇場スペースに収まるコンパクト スピーカー

「ここ3〜4回の公演は、すべてMeyer Soundのシステムを使用しました」と過去30年間にわたりMeyer Soundシステムを使用してきたエイトケン氏は語ります。「ULTRAシリーズのスピーカーはどれも気に入っています。非常に使い勝手が良いんです」

「劇場音響における最大の課題の一つは、音質だけではありません。劇場の空間構造ゆえにスピーカー システムを収めることが非常に難しい場合が多々あります」と彼は説明します。「そのため、狭い隙間や凹みにも収まるような形状のスピーカーを見つけることが重要になるのです」

ステージ上では、ピケットラインからプライド・マーチに至る屋外シーンと屋内シーンが交互に展開されますが、3つの会場すべてで採用されたサラウンド システムがその表現の差を明確にしています。

「屋外のシーンでは、会場の音響特性に対してできることは限られています」とエイトケン氏は語ります。「しかし屋内のシーンでは、さまざまな空間をシミュレートする『Atmos』プラグインを活用し、客席全体にサラウンドを配置しています。ルーム トーンや初期反射音を空間に与えることで、そこがまるで集会ホールや別の場所であるかのような響きを作り出しているのです」

生バンドと再生トラックが共存するステージ

25人のキャストに加え、全員女性の7人編成バンドがステージ上および舞台奥のバルコニーで演奏します。「約36本のワイヤレス マイクを使用しています」とエイトケン氏は語ります。「ヘッドセットマイクとハンドマイクを頻繁に切り替えて使っています」

「劇中には抗議の歌やシュプレヒコールが登場する場面があり、それらを屋外の雰囲気で響かせるよう工夫しています」と彼は言います。「屋外で30人もの人々を録音したトラックを再生することもあります」

再生トラックは、楽曲の厚みを補う役割も果たしています。例えば、1980年代を象徴するようなシンセサイザーのフレーズなどは、ステージ上のスペースに収まりきらないほどのキーボードが必要になってしまうため、こうした音源が活用されます。「重要なのは、そうした音源を適切に、賢く使うことだと思います」とエイトケン氏は語ります。「特に今回のような作品では、パフォーマンスそのものを信じることが重要なのです」

エイトケン氏はほぼすべての仕事を同じ少数精鋭のチームで行っています。「適切なスピーカーを見つけることは、適切な制御機器やマイクを見つけることと同様に重要です」と彼は語ります。「ですが、間違いなく最も重要なのは、ともに働く適切な人材を見つけることです」『Pride』のチームには、アソシエイト サウンド デザイナーのジョナス ローバック(Jonas Roebuck)氏、プロダクション サウンド エンジニアのマット ベリー(Matt Berry)氏、サウンド オペレーターのマーリン オブライエン(Merlin O’Brien)氏、ワイヤレス マイク スーパーバイザーのローラ ジンジェル(Laura Gingell)氏が含まれ、音楽のミックスはニック ギルピン(Nick Gilpin)氏が担当しています。

メインのLEOPARDアレイからコンパクトなフィル、ディレイ、サラウンドに至るまで、設計のすべての階層において、Meyer Soundシステムは物語を伝えるために機能しています。「UP-4slim、ULTRA-X20、ULTRA-X40といったこれらの小型スピーカーは素晴らしい音を出してくれます」とエイトケン氏は評価します。

「このショーは美しく、同時に強いインパクトがあります」と彼は締めくくります。「非常にパワフルで、感情を揺さぶる旅のような作品です」。