7月3日から18日にかけて、スイス モントルーのレマン湖畔で開催された本フェスティバルには、700以上のコンサートやイベントを通じて25万人を超える観客が訪れました。祝福の中心となった改修直後のモントルー ミュージック&コンベンション センターには、フェスティバルの2つの主要会場である「オーディトリアム ストラヴィンスキー(Auditorium Stravinski)」(収容人数4,000人)と「モントルー ジャズ ラボ(Montreux Jazz Lab)」(収容人数2,000人)が設けられました。ここでは、スティング、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ、ヴァン・モリソン、マーカス・ミラーといったレジェンドから、タイラ、コナン・グレイ、ピンクパンサレスといった新進気鋭のアーティストまでが集い、世代や国境を超えたパフォーマンスが繰り広げられました。

この「60/40」の節目において、パートナーシップにおける史上最大規模の機材配置が行われました。12の公式ステージをはじめ、多数のバー、ホスピタリティエリア、スポンサーブースに700台以上のスピーカーが設置されました。その設営の中心となったのが、初夏にロスキルド フェスティバルで世界デビューを果たしたMeyer Soundの最新ラインアレイ「TIGRA」のモントルー初登場でした。すべての音響システムは、スイスのレンタル会社でありフェスティバルの長年のプロダクションパートナーであるSkynight社によって供給と構築が行われました。

オーディトリアム ストラヴィンスキーのシステム

オーディトリアム ストラヴィンスキーのメインシステムには、PANTHERラインアレイと2100-LFC低域コントロール エレメントが使用されました。しかし、オープニングの夜はまったく異なるアプローチが求められました。イギリスのシンガー、レイが、ストラヴィンスキーのアリーナフロア中央に組まれた特製のセンターステージに立ち、22人編成のアンサンブルを従えて2時間のセットを披露したのです(FOHエンジニアはマティアス・ギャリック(Matthias Garrick)氏が担当)。この演出のために専用のシステム設計が組まれ、PANTHER-Mを中心に、TIGRAがインフィルとして機能し、LEOPARDLINAULTRA-X80、ならびに2100-LFCおよび900-LFC低域コントロール エレメントと連携して、観客の視線と意識を中央ステージへと集中させる構成がとられました。

サプライズゲストとしてマーク・ロンソンとアリシア・キーズがレイのステージに加わり、近年のフェスティバル史に残る象徴的な一夜を締めくくりました。この一夜限りのショーに先立ち、複数のクルーが交代制で36時間に及ぶ搬入・仕込み作業を行いました。そして翌朝には、通常のフェスティバル プログラムに対応できるよう会場全体の再構成が完了していました。

「それこそがまさに『モントルーならではの瞬間』でした」と、2週間の会期中 現場に常駐していたMeyer Soundのプロダクトマネジメント シニアディレクターであるアンディ デイヴィス(Andy Davies)は語ります。「このフェスティバルは、そうした体験や驚きの瞬間を生み出すことを目指しています。それが私達に課題を突きつける場合であっても、非常にやりがいがあります。初日からすべての場所で最高のパフォーマンスが発揮され、この素晴らしい最初のショーだけでなく、それに続くフェスティバル全体がモントルーの誇る高い水準を維持できるよう尽力しました」

モントルー ジャズ ラボでのTIGRA

モントルー ジャズ ラボでは、TIGRAが2100-LFC低域コントロール エレメントとともにシステムの中核を担いました。「TIGRAはサイズと重量の面ではミドルサイズですが、サウンドの面では大型システム同等です」と、フェスティバルのサウンドコーディネーター兼レジデントエンジニアのマルティン ライヒ(Martin Reich)氏は語ります。「過去には重量制限のために小型システムを使用せざるを得なかったこの会場で、大型システム特有のサウンド クオリティを実現できるようになりました」

乗り込みのエンジニアたちもこの新しいシステムに即座に好反応を示しました。会期中にラボ で複数のアーティストのミキシングを担当したロンドン在住のFOHエンジニア、フェミ ベロ(Femi Bello)氏は、TIGRAの際立った特性として「リニアリティ」を挙げます。「声の小さなシンガーであれ声量の大きいシンガーであれ、そのニュアンスが力強く伝わってきます。ミキシング・コンソールに入力し、PAへ送出した信号が100%忠実に再現されるのです」と彼は言います。「バランスが絶妙ですね」ラボ専属のFOHエンジニアであるフランク デマレット(Frank Demaret)氏も同様の印象を抱いています。「エンジニアたちは到着し、システムを鳴らすと『よし、大丈夫だ』と言います。微調整をすることはあっても、『すべて変更しなければならない』と言うミキサーを見たことがありません」

デイヴィスにとって、TIGRAが他のMeyer Sound製品群とシームレスに統合できる点は、このフェスティバルにおける最も重要な発見の一つでした。「ストラヴィンスキーで、メインのPANTHERアレイに対するセンターフィルとして設置されたTIGRAの音を聴きましたが、両者の音の境目が全く分かりませんでした」と彼は語ります。「これらの異なるタイプのスピーカーが1つのファミリーを形成しており、多様な用途で活用できるのです」 会場全体において、接続・制御ソフトウェアのNebraが、従来のRMServerやGalileo GALAXYネットワークプラットフォームから、TIGRA内蔵のGEN-1プロセッシングに至るまで、世代の異なるプロセッシング アーキテクチャの管理を単一のプラットフォーム上で統合的な運用を可能にしました。

真っ白なキャンバス

どのステージにおいても、予測可能性こそがあらゆる要素の基盤となっていました。「フェスティバル会場全体で音響特性の一貫性が保たれていることは、非常に心強いことです」とライヒ氏は語ります。「システムが正常に動作しているときの音があらかじめ分かっているため、スピーカーを全面的に信頼できるのです」

乗り込みエンジニアにとって、その一貫性は表現の自由へとつながりました。「私達は彼らに真っ白なキャンバスを提供し、そこに自由に色を描いてもらっています」とライヒ氏は言います。「ある夜はあるエンジニアがある帯域をカットし、翌夜は別のエンジニアが同じ帯域をブーストしている様子を見ると、私達が目指したものが実現できていると実感します。エンジニアの約75%は、イコライジングに全く手を加えません」

Meyer Soundのテクニカルチームが会期を通じて現地に常駐しました。ベテランのプロフェッショナルと若手エンジニアとの間での世代を超えた指導・交流は、この協力関係がもたらした最も永続的な成果の一つと言えます。「ここには膨大なノウハウが集積されているため、専門知識を共有・継承する絶好の機会となっています」とデイヴィスは語ります。「若手エンジニアにとって非常に素晴らしい環境です」 ライヒ氏も同調します。「私たちが話し合ったアイデアが実際の現場で形になるのを見るのは、大きなやりがいがあります。開発の核心チームとこれほど近くで接することは、各ステージで日々の運用を担う若手音響エンジニアにとっても大きな刺激となっています」

新しいシステム、全面的に改修された会場、刷新されたバックステージの構成、そして極めて複雑な演出が求められた初日の公演――そうした状況下でも、40年目の提携はあらゆる面で期待通りの成果をもたらしたとデイヴィスは振り返ります。「予期せぬトラブルはありませんでした」と彼は言います。「素晴らしい体験と最高なギグの連続でした」

レマン湖を越えて世界へ

モントルー ジャズ フェスティバルが中国、南アフリカ、マイアミといった新たなグローバル市場へ進出を広げる中、Meyer Soundの役割もまた、フェスティバルと共に進化を続けています。マイアミの運営チームから『Meyer Soundのおかげで、モントルーのサウンドをマイアミのステージにもたらすことができた』と言われましたとデイヴィスは語ります。「彼らから自発的に寄せられた言葉でした。しかし、それこそが私たちの目指すところなのです。単にブランドを維持するだけでなく、新たな市場においてもその価値を確実に届けることこそが重要なのです」

「モントルー ジャズ フェスティバルは常に、アーティストの体験と観客の体験は切り離せないものであり、その双方が『音』から始まると信じてきました」と、フェスティバルCEOのマチュー ジャトン(Mathieu Jaton)氏は語ります。「Meyer Soundとの関係は、この共通の信念の上に築かれています。この関係が40年にわたって続いてきたのは、進化を止めたことがないからです。私達がフェスティバルを世界中の新しい観客へ届ける中で、Meyer Soundもともに進化しています。そして、その継続性こそが、私達が築き上げているあらゆるものの核となっているのです」

Meyer Soundの共同創設者であるヘレン マイヤー(Helen Meyer)にとって、「60/40」の節目は単なる年月の長さ以上のものを意味しています。「40年前、フェスの創設者である、クロード ノブス(Claude Nobs)氏は、これまで存在しなかったもの――『音響が音楽そのものと同等の高基準で扱われるフェスティバル』を一緒に作り上げてほしいと私達に協力を求めました」と彼女は語ります。「振り返ってみて最も心を動かされるのは、そのアイデアが深まり続けているということです。モントルーでは毎年、新しい発見があります。それは偶然ではありません。2つの組織が同じ価値観を十分に長い間共有し続けたときにこそ生まれる成果なのです」