6月7日にラジオシティ・ミュージックホールで開催された第79回トニー賞授賞式において、サウンドデザイナーのカイ・ハラダ氏は、うらやましくもあり、本人曰く「少し恐ろしくもある」状況に置かれていました。彼がノミネートされたミュージカル音響デザイン賞の2作品は、いずれもMeyer Soundのシステムで構築されていたのです。リンカーン・センター・シアターのリバイバル公演としてヴィヴィアン・ボーモント・シアターで上演された『ラグタイム(Ragtime)』で彼の名前が呼ばれた際、その場の出来事があまりに目まぐるしく、彼は一瞬どちらの作品で受賞したのか把握できませんでした。残り時間90秒のカウントダウンと眩しい舞台照明の中、彼は最も理にかなった唯一の行動をとりました。――「どちらの作品ですか?」と訊ねたのです。

この瞬間は授賞式における最も話題になった場面の一つとなりました。台本にはない、愛すべきその振る舞いは、「作品そのものに語らせる」という彼のデザイナーとしての姿勢を象徴するものでした。これは2018年の『バンズ・ヴィジット(The Band’s Visit)』に続くハラダ氏にとって2度目のトニー賞受賞であり、ともにMeyer Soundシステムで手掛けた『ラグタイム』と『キャッツ:ザ・ジェリクル・ボール(Cats: The Jellicle Ball)』の2作品で同時ノミネートされるという偉業を成し遂げたシーズンを締めくくりました。ハラダ氏に、『ラグタイム』での取り組み、ヴィヴィアン・ボーモント・シアター特有の課題、そして自身のビジョン実現においてMeyer Soundが果たした役割について話を訊きました。

受賞スピーチがとても印象的でした。ステージの上ではどのようなことを考えていましたか?

「これ見よがしな自慢や気取ったパフォーマンスのように見えないといいな、と心から願っていました。本当にどちらの作品で受賞したのか分からなかったんです。でも後でダニエル・ラドクリフが『チャーミングだったよ』と言ってくれたので、彼がそう言ってくれるなら、あれで良かったんだなと思いました」

スタイルが全く異なる2作品(『ラグタイム』と『キャッツ:ザ・ジェリクル・ボール』)でノミネートされましたが、どちらもMeyer Soundのシステムを使用していますね。壮大な時代劇のリバイバル作品と、『キャッツ』のような抽象的な作品とで、デザインの思考をどのように切り替えているのですか?

「まず決定しなければならないのはカバーエリアとスピーカーの配置です。地味な作業に聞こえるかもしれませんが、そこには多くの創造性が求められますし、他の部署との綿密な連携や調整も必要になります。ヴィヴィアン・ボーモント・シアターは「スリー・クォーター・スラスト(客席が舞台を三方から囲む形式)」の劇場ですが、以前そこで手がけたのはマイク・バービグリアのコメディ公演だけでした。その時は、彼がヘッドセットマイクをつけ、再生音源を流すというシンプルな構成だったんです。『ラグタイム』では、30名のアンサンブルが生音でどう響くのか、ピット内の28名の奏者がどう機能するのかが未知数でした。前回の経験やスタッフからの情報を頼りに、演者の位置に合わせた音像定位やディレイ・マトリクス制御を行う前提でシステムを構築しました。劇場自体の音響特性が良いことも分かっていたので、空間の音と戦う必要がない分、それだけで大きなアドバンテージになりますから」

Meyer Soundのシステムはどのように構成されていきましたか?

「ULTRA-X40を使用することは最初から決めていました。ULTRA-X40(ポイントソース・スピーカー)のリニアリティ(直線性)は群を抜いています。あまりに音が透明で自然なため、『本当に電源が入っているのか?』と思ってしまうほどですが、それこそが私が求めていた音なのです」

「最終的に合計16台のULTRA-X40を採用しました。10台はオーケストラ席エリアを2つのリング状にカバーし、2台はオーケストラ自体の補強用、そして残りの2台は左右の端に座っている観客のために音像イメージを前方下側に引き寄せる役割を担っています。バルコニー前方は6台のUPA-2P、バルコニー席 後方とステージ上モニターには14台のUPM-1Pを配置しています。低域用としては、ステージ上にフライング配置した2台の750-LFC、特定の爆発音などの効果音専用に2台の600-HP、そしてオーケストラピットの近くに2台の500-HPを配置しました。ピットの手すり沿いのフロントフィルには14台のMM-4を使用しています。システムのチューニングには常にMeyer SIM3を使用しており、今回はGalileo GALAXY 816プロセッサーを6台(予備1台を含む5台稼働)使用しました」

Galileo GALAXYネットワークプラットフォームをユニークな方法で活用されたそうですが、どのような仕組みだったのでしょうか?

「シーン内でキャストが位置する場所に合わせて、異なるタイミング設定を持つアクティングゾーンを作成しました。それを可能にしたのがGALAXYです。ある曲で、上手手前・中央手前・下手手前にそれぞれ登場人物が立つ場面があります。キャスト間で時間軸の差を設けない場合、対位法(カウンターポイント)を音響的に処理するのは非常に困難です。各キャストを舞台上の立ち位置に合わせて時間調整されたコンソールのサブグループに割り当てることで、どの客席からでも奥行きや立体感、明確な分離感を得られるようにしました。標準的なGalileoではなくGALAXYを指定した理由は、この内蔵されたディレイ・マトリクス機能にあります」

あなたの音響哲学は『言葉の聴き取りやすさ(明瞭度)』を第一に考えていますね。28人編成のオーケストラをバックに30人のキャストが歌って始まる作品において、どのようにそのクオリティを維持しているのですか?

「重要なのは、何と言ってもマイクの配置です。私の考えはこうです。まずPAシステムの音を整え、会場全体に均一な音が行き渡るようタイミングを合わせます。その上で、適切な位置(例えば額の生え際の中央など)に俳優のマイクを装着すれば、コンソールでのチャンネルEQ調整はほとんど必要なくなるはずです。まるでその人本人の声のように聞こえる……それを可能にしてくれるのがMeyer Soundなのです」

『ラグタイム』は、リンカーン・センターのヴィヴィアン・ボーモント・シアターにて2026年8月16日まで上演されています。Meyer Soundの音響機材はMasque Soundにより供給されました。ハラダ氏のチームには、アソシエイト・デザイナーのオーウェン・メドウス(Owen Meadows)氏、A1/ミキサーのルーカス・ギルボー(Lukas Guilbeau)氏、そしてリンカーン・センター・シアターの音響チームからA2のチャールズ・シェル(Charles Shell)氏、ジャック・オブライエン(Jack O’Brien)氏、コリン・ブレイガー(Colin Braeger)氏、リアム・コイル(Liam Coyle)氏が参加しています。