カリフォルニア大学バークレー校のゼラーバッハ ホール(Zellerbach Hall)で最初のConstellation(コンステレーション)音響システムが初めて導入されてから20年を迎え、Meyer Soundは「コンステレーション アコースティック スイート(Constellation Acoustic Suite)」を発表しました。これは、コンサート ホールから教室、アリーナ、レストランに至るまで、過去20年間にわたる実際の運用現場で培われた同システムの多彩な機能を、7つの用途別アプリケーションとして体系化したものです。
空間の音響特性を電気的に調整するシステム「Constellation」は、ジャズ アット リンカーン センターの「アペル ルーム(The Appel Room)」から上海の交通銀行NEW BUND 31パフォーミングアーツセンターの「グランド シアター」に至るまで、現在世界31カ国で175以上のシステムが導入されています。
再生型アプローチが、あらゆる空間の音響環境を向上させる
Constellationの中核を担うのは、ニュージーランドの音響学者マーク ポレッティ(Mark Poletti)博士が開発した特許技術「VRA(Variable Room Acoustic:可変室内音響)システム」のアルゴリズムです。この技術は、Meyer Sound が2006年に買収したLevel Control Systems(LCS)を通じてライセンス提供されています。Constellationシステムでは、マイクロフォン、デジタル信号処理、そして空間内に分散配置されたスピーカーが連携し、その空間の残響特性を自在に形作ります。
「当初から、この技術は建築構造だけでは実現できなかった音響的柔軟性を施設にもたらすことを目的としていました」と買収当時LCSのCEOを務めていたMeyer Soundの最高執行責任者(COO)であるジョン マクマホン(John McMahon)は語ります。「20年が経過した今、実に多様な空間にこの技術が採用されているのを見るのは実に感慨深いことです」 Constellationの導入事例は、ドイツの「kINGカルチャー&コングレス ホール」からメルボルンのモナシュ大学「アレクサンダー シアター」、ハノイの「ホー グオム オペラ」など、その活用範囲は多岐にわたります。
「Constellationの最大の特徴は、再生型(リジェネラティブ)のシステムであるという点です」とMeyer SoundのConstellation事業開発マネージャーであるジョン オーウェンズ(John Owens)は語ります。「空間に別物の音を無理やり付加するのではなく、その空間が本来持っている固有の音響特性を活かし、それを向上させるのです。私たちは音響設計者と協力し、優れた空間の表現の幅を広げるお手伝いをしています」
このアプローチは数多くのアーティストを魅了してきました。ピューリッツァー賞受賞作曲家のジョン アダムズ(John Adams)はConstellationを「優れたエンジニアリングと技術によって、音楽を聴く物理的な空間を真に向上させることができる生きた証拠である」と評し、ヴァイオリニストのジョシュア ベル(Joshua Bell)はその性能を「奇跡的と言えるほどだ」と表現しています。
NADIAプロセッシングが広げるConstellationの可能性
Meyer Soundのデジタルオーディオプラットフォーム「NADIA」は、2023年にジャズ アット リンカーン センターの「アペル・ルーム(The Appel Room)」で初導入されました。同施設の創設者兼芸術監督であるウィントン・マルサリスは、これを「コンサートホールの世界を変えた『Constellation』の新たな心臓部」と評しています。それ以来、NADIAはブルックリンの「ナショナル・ソーダスト(National Sawdust)」や「ゼラーバッハ・ホール(Zellerbach Hall)」におけるアップグレードをはじめ、Constellationの最新プロジェクトを支えてきました。このプラットフォームには、VRASアルゴリズムが誕生して以来初となる大幅な改訂が盛り込まれています。これにより、より豊かで密度の高い反射パターンが生成され、自然で明瞭な音質を保ちつつ、空間をより広く感じさせることが可能になりました。
「Constellationはその存在を感じさせないよう設計されています。観客はシステムが稼働していることに気づくことはなく、オフにした時に初めて、それがどのような役割を果たしていたのかを実感するのです」とオーウェンズは語ります。「改良されたVRASアルゴリズムは、その透明性をさらに進化させています」
NADIAはより高いゲインと導入・調整プロセスも実現し、従来のデジタルオーディオプラットフォーム「D-Mitri」からNADIAへアップグレードすることで、施設側には将来的な拡張の余地が生まれます。
Constellationの多彩な可能性を示す7つのアプリケーション
「コンステレーション アコースティック スイート」は、は、Constellationを構成する一連のアプリケーション群です。各アプリケーションは明確な成果に焦点を当てており、単独で使用することも、組み合わせて使用することも可能です。「20年にわたる開発の過程で、Constellationはコンサート ホールの領域を大きく超えた役割を担うようになりました」とオーウェンズは言います。「これら各アプリケーションに名前を付けることで、施設側やコンサルタントは、Constellationが何をもたらしてくれるのかを把握しやすくなります」
このスイートは、Meyer SoundがConstellationを説明する際に用いるフレームワーク――すなわち、空間内における「演者から観客へ」「観客から演者へ」「演者同士」「観客同士」という4つのコミュニケーション経路に基づいています。このフレームワークの中で、本スイートは7つのアプリケーションを定義しています。
- Constellation Perform:会場の自然な音響特性を、室内楽からオーケストラ、さらには拡声(PA)を伴う公演に至るまであらゆる用途に合わせて適応させます。
- Constellation Stage:物理的な反響板(オーケストラ シェル)の代わりとして、あるいはそれと並行して、または独立したステージ上システムとして機能し、意思疎通やタイミングを向上させることで、ステージ上のミュージシャンの演奏体験を向上させます。
- Constellation Elevate: 講義室、行政の議場、礼拝施設において、自然なヴォイス リフトをもたらし、話し声が遠くまで届くようにします。
- Constellation Unite: 礼拝堂でのコール アンド レスポンスからテレビ スタジオでの笑い声や拍手に至るまで、観客同士の音響的な一体感を強化します。
- Constellation Focus: 会議室、教室、ホスピタリティ空間において、局所的な明瞭度とサウンド マスキング効果をもたらします。
- Constellation Ignite: スポーツ アリーナや大規模エンターテインメント施設において、観客の熱気を高めます。
- Constellation Create: 劇場、レコーディング スタジオ、スコアリング ステージ、ポストプロダクション施設において、クリエイティブ プロセスの一環として音響を自在に形成・変容することを可能にします。
教室、アリーナ、スタジオへと広がるConstellationの適用範囲
これらのアプリケーションの中には、長年にわたる導入実績に基づくものもあれば、Constellationにとって新たな市場を切り拓くものもあります。
スポーツ施設も、注目度が高まっている分野の一つです。スポーツ アリーナはより多くの音楽イベントに対応するために音響的な調整(吸音)を余儀なくされていますが、スポーツ ファン同士には依然として一体感を感じられる音環境が必要です。ストックホルムのアヴィーチー アリーナ(Avicii Arena)では、12ゾーンに分かれたConstellationシステム導入されています。これにより、1万4000席を擁するアリーナの両端にいるホッケーファン同士が、残響時間が短縮された環境下であっても、互いの応援の声や歌声を聴き合うことができます。「アリーナはコンサートで良い音が鳴るように吸音処理されるケースが増えていますが、それによって試合中の観客の熱気が失われてしまいます」とMeyer SoundのConstellationディレクターであるピエール ジェルマン(Pierre Germain)は語ります。「Constellationはその熱気を取り戻してくれるため、同じ施設で両方の用途に対応できるのです」
ジェルマンはアリーナにとどまらず、没入型のスポーツ ビューイング施設からチャンピオンシップ開催時のスポーツバーに至るまで、さらなる可能性を見出しています。
教育分野にも極めて自然に適合することが実証されています。コペンハーゲン大学のマースク タワー(Maersk Tower)には教育分野で世界最大規模のConstellationが導入されており、スウェーデンのエレブルー大学では、指導者がConstellationを使用して少人数の学生グループへ音を集中させ、ボタン一つで講義プレゼンテーション モードへ戻すといった活用がなされています。
レコーディング スタジオもまた新たな領域です。「全員がヘッドホンを装着し、リバーブ・プラグインを通した音を聴くのではなく、部屋そのものを使って非常にユニークな響きを生み出すことができます」とジェルマンは語ります。「部屋を一つのエフェクト ツールとして活用することで、ミュージシャンやレコーディング・エンジニアの創造性をより一層引き出すことができるのです」
統合が形作る次のステージ
「Constellation」の新たな章はすでに始まっています。その中心にあるのが、Meyer Soundのより広範なプロセッシング・エコシステムとシステムを接続する「NADIA」です。「施設側が、Constellationを独立した別のものとして捉える必要はありません」とオーウェンズは言います。「それは、すべてが連携して機能するオーディオ システムの一部なのです」
「競合他社が決して追いつけないもの、それは時間と経験です」とジェルマンは語ります。「そして私達は今もなお、可能性の限界を押し広げ続けています」




















